Monthly Research 「次世代の車載ネットワークと現状のセキュリティ研究動向」

今回のMonthlyResearchでは、車載ネットワークの動向と従来のCANネットワークに対する脅威についてレポートします。

近年の自動車は、運転支援機能や安全機能を実現する為に様々な電子デバイスが搭載されるようになり、これらのデバイスは車載ネットワークを介して相互通信を行っています。

車載ネットワーク上に存在するデバイスは、所謂エンジンやモーター、エアバッグ等を制御するECU(Electric Control Unit)だけではなく、カーナビゲーションシステムや運行管理を行う為に様々な車両情報を収集するテレマティクス装置も例外ではなく、こうした装置による通信量の増加や、なにより車載ネットワークに接続されるデバイスの増加に伴う配線重量やコストの増加に伴って、次世代の車載ネットワークに対する関心が高まっています。

そこで今回は、次世代の高速な車載ネットワーク規格として期待されているEthernetについて標準化動向や関連団体について調査を行いました。
ここでは、調査したうちの1つであるOPEN Alliance BroadR-Reach(オープン・アライアンス ブローダーリーチ。本記事では以降、OABRと記載)についてフォーカスします。

OABRはブロードコム社が開発した、主に物理層の技術であり、従来の家庭やオフィスで使用されているEthernetとは異なり、2芯/1ペアのUTPケーブルで100Mbps/fullを実現しています。
これによって車載ネットワークの課題の1つである配線重量やコストが抑えられることが期待されます。さらに、ブロードコム社の解説資料によればOABRを用いたEthernetコントローラーでは上位のレイヤには従来のEthernet技術が適用できるとしていることから、VLANや優先制御などの既存技術を利用することで柔軟性の高い車載ネットワークを構築することも可能になります。[図1]

[図1]


様々なメリットがある次世代の車載ネットワーク技術ですが、従来の車載ネットワークと完全に置き換わるかというと、車載ネットワークに求められる厳しい要件などの理由によって今後販売される自動車に対してすぐに、とはいえません。
そのため、現状のデファクトスタンダードとも呼べるCANネットワークに関しても引き続き調査、研究を続けていく必要があります。

弊社では、2013年にも車載ネットワークに関するMonthly Research(車載ネットワークの現状)を公開していますが、このリサーチ以降も国内外問わず車載ネットワークやCANに関する脅威報告が複数回行われています。
特に近年では、CANの物理層に着目したメッセージ改ざんテクニックに関する論文が多く発表されていることから、MAC認証によるメッセージそのものに対する改ざん検知技術の検討が必要になってきているといえます。(CANに対するメッセージ認証機構については今回レポートで紹介している論文内やAUTOSAR (オートザー、AUTomotive Open System ARchitecture)でも言及されています)

更に詳しい技術情報や対策についてはPDFスライドをご覧ください。


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